サンガンピュールの物語(お菓子の国)2話-2-地下フロアを歩いていたら、サンガンピュールは一枚の広告ポスターを見つけた。 「おじさん!『お菓子の国』だって!」 「『お菓子の国』?」 「ヘンゼルとグレーテルに出てきそうなお菓子の家とか出てくるのかな?」 珍しく年齢相応な反応をするサンガンピュール。 「どれどれ・・・、どうやらお菓子屋さんの集まりみたいだ」 「集まり?」 「そう」 とKが言いかけた時、地下フロア内に悲鳴が響き渡った。 「きゃあああああっ!!」 「なんだ!?」 Kとサンガンピュールが悲鳴の聞こえた方面へ走り出した。すると叫び声が聞こえた。 「誰か助けてください、従業員のひとりがナイフを突き付けられています!」 と、従業員がお客さんめがけて叫んできたのだ。 すかさずサンガンピュールが、Kを置いてけぼりにし、人ごみを掻き分けて現場に向かった。彼女が目にした光景とは・・・、なんと、肉売り場で男性店員にダガーナイフを突き付けている男が立っていた。サンガンピュールは思わず叫んだ。 「あんたは何者なの、一体!」 「俺か?俺はな、旧仏教の過激派だ!」 これに対してKは突っ込まずにいられなかった。 「仏教で過激派なんて初耳だよ。それに自分から過激派って言うかよ・・・」 このことが良く分からなったサンガンピュールはまた聞き返した。 「旧仏教の過激派?よく分かんないんだけど!」 男はこう言い放った。 「お前が知る必要は無い!そもそも俺は菜食主義者なんだ。仏教の五戒にな、不殺生戒(ふせっしょうかい)というのがあんだよ!だから動物の肉を売っている全ての人間が憎いんだよ!だから、肉を売ってねえで野菜をたくさん売れよ!」 この菜食主義者は男性店員の首を切りつけるそぶりを見せている。 サンガンピュールは叫んだ。 「難しいことを聞かされたけど、いくらなんでもやりすぎなんじゃない!?」 いつの間にか買い物客の間にざわめきが起こった。彼女が土浦ではスーパーヒロインとして有名であることを知っている人は、周りの買い物客の中にはほとんどいなかったからだ。そんなムードが出てきた時だった。 「なんだ、このチビ!少しでも近づいてみろ、この男の首を切るぞ!」 男はそう言って自分のダガーナイフを店員の首に密着させた。今にも切りつけられそうな店員はおそるおそる言った。 「お願いだ、彼の言う通りにしてくれ・・・」 「お前は黙ってろ!」 サンガンピュールは策を練り、それから1分もしない内に、後ろにいたKにお願いした。Kはたまたまこの日はセーターを着ていた。そのセーターを貸してほしいと言ったのだ。Kは何をするつもりなのかと思いつつ、貸した。そして彼女は腰に巻いた。 サンガンピュールと菜食主義者の睨みあいは5分ほど続いた。その時、彼女は拳銃を取り出した。男は叫んだ。 「おいっ、何する気だ!撃つんなら切るぞ!」 男が警告する中、彼女は照準を定めていた。ダガーナイフから5メートルほど離れたところからだ。拳銃が出たら周りの買い物客は冷静でいられるはずもなく、様々な方向へ散っていき、地下街は大騒ぎになった。そして、 「バーン!!」 北千住の地下街に銃声が響いた。弾丸はダガーナイフにあたり、それは地面に落ちた。それと同時に店員の男性は失神して倒れた。男が逆上したその隙に、彼女は自分の念力で店員を後ろのKに回した。そして男と1対1で対面した。男はダガーナイフを前に出し、彼女目掛けて突進してきた。 「ウオオオオオッ、ぶっ殺してやる!!」 凶器を前に動じないサンガンピュールは借り物のセーターで男の右腕をくるみ、身動きを取れなくした。彼女は男を投げ技で飛ばし、結果としてリンゴの山へ突っ込んだ。彼はその際にナイフを落とした。隙を入れずに彼女は拳銃からライトセイバーに持ち替えた。そしてそこから発生する高温の光でナイフを融解させ、男の武器を使い物にならなくしたのだった。そしてライトセイバーを男に突き付けたところでKがストップをかけた。もういいだろう。 サンガンピュールの勝利である。見事な速攻業で、周りの買い物客から歓声が上がった。店員の男性も失神はしたものの命に別条は無かった。しばらくして菜食主義者は警察に連行されていった。 (第3話に続く) |